「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」発刊へ

先ごろ、日本老年医学会による「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」(以下、ガイドライン)が完成し、発刊されました。
ガイドラインは有害事象の発現リスクの高い高齢者に対し、安全性の高い薬物治療を行う目的で2005年に初めて作成されたもので、今回10年振りに改訂されました。

「慎重な投与」と「開始を考慮」

本年4月に発表された案では、米国のBeers基準、欧州のSTOPP/START criteriaを参考に、中止を考慮するべき薬物もしくは使用法のリスト=「ストップ」、新たに強く推奨される薬物もしくは使用法のリスト=「スタート」、との表現でした。
しかし、ガイドライン案に対し寄せられた「『ストップ』という表現は禁止薬と誤解されやすい」等のパブリックコメント等を受けて、最終的には「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」、「開始を考慮するべき薬物のリスト」という表現に落ち着きました。
欧州のSTOPPは、Screening Tool of Older Persons potentially inappropriate Prescriptions、STARTはScreening Tool to Alert doctors to Right Treatment の頭文字で構成されているのですが、カタカナでは、そのニュアンスが伝わりにくい部分もあったのかと思います。

身近な医薬品が「慎重な投与」に

ガイドラインに目を通すと、「特に慎重な投与」にリストされている薬剤が、抗精神病薬、睡眠薬、抗血小板薬、利尿薬、H2ブロッカー、糖尿病薬など、広く処方されている薬剤であることに驚きます。
これまで高齢者に対して、あまり意識をせずに調剤を行っていた薬剤も少なくないと思います。それらの薬剤の必要性を再度検証しながら、患者さんやご家族に副作用や症状の変化のヒアリングなどを行い、処方医に適切にフィードバックできるよう、意識を改めるきっかけとしたいところです。
また、ガイドラインでは、近年問題となっている多剤併用、ポリファーマシーについてや、飲み忘れ、飲み間違いなどの服薬管理についても触れられ、ポリファーマシーによる有害事象を防ぐための対策や、処方一元化の重要性などについても言及されています。

高齢者医療に薬剤師が関わるために

一方で「開始を考慮すべき薬剤」としては、レボドパ製剤、ACE阻害薬、ARB、スタチン、α1受容体遮断薬などがリストされています。
中でも、ACE阻害薬がARBよりも上位で推奨されている点に注目です。
高齢者では、嚥下機能低下による誤嚥性肺炎がしばしば問題となります。ACE阻害薬には、主作用である降圧作用に加えて、サブスタンスPの分解抑制による嚥下反射の改善効果が知られています。この作用を利用し、誤嚥予防を期待され、ARBよりも上位推奨となっているのです。
こうした薬理作用による薬物使用の適正化はまさしく、薬剤師の得意分野です。ガイドラインに記載された薬剤の薬理作用や、エビデンス・文献などを十分熟知し、その知識と理解を深めておくことが大切です。
今後、高齢者への医療はますます拡大していくと予想されます。患者さんの症状や訴えを聞き取りながら、薬剤師としての知識を活かして医師にフィードバックを行い、適切な薬物治療に繋げられるよう、このガイドラインをしっかり活用していきたいですね。

※2015/12/27 「薬剤師の転職・求人・派遣募集なら【転職ゴリ薬】」掲載分原稿

ふな3
ふな3
栃木県にある調剤薬局に勤務する薬剤師です。 薬局薬剤師としての勤務経験は長いとは言えませんが、日々業務や勉強をしながら気づいたことや感じたことを書き留めていきたいと思います。 ツイッターはこちら → @funa3di

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